焦げパンのナニカさん『焦げたって朝になる』

パン屋の片すみに、すこし焼きすぎたパンがひとつ。
誰かに選ばれることもなく、棚の端でじっとしているそのパンには、
小さな「夢の投影」が宿っていました。

——もし、自分が人間だったら。
焦げたことを「味」と呼び、
ムラのある焼き目を「私らしさ」として笑って働くことができたら。

擬人化された彼女は、レジ前で「おはようございますっ♪」と笑います。
発酵バイブス、紫チーク、そしてほんのり残した甘さ。
それらはぜんぶ、焦げの上に重ねて焼かれた“こころの衣”でした。

でもそれは、ただの夢。
ガラスのドアの鈴が鳴って目が覚めたとき、
彼女はまた、焦げたパンのまま、静かに棚に戻っていきます。

だけど、不思議とぬくもりは残ったままでした。

焦げたからこそ、見えた景色があった。
焦げたままでも、誰かを想う気持ちは変わらない。
そういうナニカさんです。


🍞 焦げパンのナニカさん
No.未定｜食べ物系｜夢見るレジ前スマイル担当


💬
焦げたものを「失敗」としてすぐに捨ててしまう世界で、
彼女は“焦げ”という記憶を、そっと温めていました。