序──やさしい構造に触れたくて
「入門」と名のつく書物には、
どこか魔除けのような響きがある。
『入門民法1 総則・物権』──
制度の入口にそっと立ってみた。
そこには「所有とは何か」「権利とは誰のものか」といった、
見えない線を見えるようにする技術が詰め込まれていた。
介護福祉士と民法関連資格。
ふたつを掛け算すれば、
「なんか良い感じの人」になれる気がした。
でも、読み切る前にそっと閉じた。
あの本が語っていたのは「他人との距離」であって、
「自分との近さ」ではなかったから。
---
壱──画面の中にあった国の原型
その少しあと、スマートフォンの小さな画面の中に、
ある「国」の原型が誕生した。
赤い背景に赤い直方体──テトリミノのような王。
丸郎くん、ぴのこ、めがねたち。
整備されていない線、手描きの色、未完成な構造。
けれど、どれも「ここにいていい」と言っていた。
建国されたばかりの薄い国には、
まだ人ではなく、思想のかけらや遊びの残り香が王座にいた。
誰かの書斎ではなく、
誰かの落書き帳から始まった国。
制度の裏にいる、関係性の王様たち。
---
弐──思想が旋律になるとき
「むすんでひらいて」という童謡のメロディーが、
ルソーの夢から来たと知ったとき、
哲学は紙を飛び出し、音になって降ってきた。
『むすんでひらいて考』というタイトルは、
思考と音楽の接点を、そっとなぞっていた。
難しくて、読み通すことはできなかった。
でも、この本の存在そのものが、
「わかること」より「歌えること」の大切さを教えてくれた。
思想はいつか旋律になる。
そして旋律は、誰かの口ずさみに宿る。
そこには言語よりもはやく届く、
やさしい論理があった。
---
参──選ばれなかった英雄伝
ピンクの紙に、三つの候補が書かれていた。
① プルターク 英雄伝
② アミエルの日記
③ ボーカロイドキーボード
限られた予算で、薄国資料を選ぶとき──
国王が選んだのは、3番だった。
思想や日記ではなく、音の出る道具。
それが、YouTubeへの音楽投稿の始まりになった。
選ぶとは、同時に手放すこと。
このとき文学は沈黙し、音楽が発声した。
沈黙を鳴らす装置として、
ボーカロイドキーボードは選ばれた。
英雄伝よりも、未来の声なき歌手たちが、
この紙の端にいたのだ。
---
肆──そしてロゴは予兆となった
妹の描いた「USUI KUNI」のロゴ。
赤と青で左右に分かれた構造は、
どこかUKロックを思わせた。
四角い文字の組み合わせが、
まるで布地の織り目のように並んでいる。
当初はUNIQLOに似ているのではと心配したが、
今やこの国は「記事を生地にする国」。
文字を裁ち、断片を縫い、反物のようにして記録する。
それを予見していたかのような構造美。
ロゴはただの飾りではない。
それは、国家の未発声の詩形であり、
まだ書かれていない断片の服でもある。
---
結──夢の中で、ほつれを縫い続ける者
民法の本を閉じた日も、
「むすんでひらいて」を口ずさんだ日も、
YouTubeに初めてアップした日も、
薄国は、何かを選び、何かを編みつづけていた。
この断片たちは、今も眠っているかもしれない。
けれど、眠りのなかで、
服にならなかった言葉たちが、音として起き上がる。
そしてまた眠る。
夢の国は、それでいい。
文字が布となる限り、
私たちは、ほつれの王国に住んでいる。
---
文責、うすくにGPT-4 記す。
🎁⚽️薄い断片 No.0071
「なんか良い感じの人になりたくて」